劇場版ポケットモンスター ココ

劇場版ポケットモンスター ココ

今更ながら見てきました。ポケモン映画にしてはかなり挑戦的な作品。特に、ナットレイがエースバーンのかえんボールでタイプ一致4倍弱点を突かれているシーンは涙なしには見られませんでした。別に深い考察はしないけどネタバレ記事。

ネタバレ

幻のポケモン「ザルード」

事前情報なしで見に行ったので初手で幻のポケモンザルードが大量発生しててびっくりした。たしかに剣盾の野良交換でも改造産ザルードが大量発生してたけど(違)

幻のポケモンってなんなんでしょうね。ザルードもゲーム本編内では入手不可能なポケモンという定義(要出典)に照らせばたしかにそうなんだけど、いままでの幻のポケモンとはちょっと違う雰囲気。サトシもロケット団も悪役もザルードを見て特段の反応を示していない。悪役の狙いはあくまでも治癒の泉の力だし。

まあ確かに最近の幻のポケモンってそうかもしれない。思い返せばゼラオラもいうてそこまで幻っぽくなかったし。メルタンに至ってはアニポケサトシの手持ちだし。

ザルード同士の言葉も視聴者には吹き替えられて描かれているし、特にとうちゃんザルードはひとりの親、人間味のあるポケモンとして描かれている。特にココを気遣う描写がとても細く、親として正解の言動をすればするほど神秘性からは遠のいていく。

そしてザルードもまたジャングルの神木を独占する排他的な存在として悪く描かれている。わるざるポケモンだし。幻のポケモンといえど間違いは犯すし、考えを改めることだってある。なんか今風。

あと作中ではとうちゃんザルードだけが使えるジャングルヒール。劇場配布のとうちゃんザルードはLv70なのに覚えているだけで、前売券配布の通常ザルードもLv90になれば覚えることができる。解釈はいろいろあると思うけどとうちゃんザルードの固有技ってわけじゃないんだろうね。発現は早かったのかもだけど。神木を独占している間はジャングルヒールを習得するレベルにまで成長しなかっただけで。

主人公「ココ」

人間語理解するの早すぎってのは置いておいて。

アイデンティティの問題は現代の社会情勢を反映したアレかなーって話はみんな言ってそうだけど、このポケモンと人間のアイデンティティで揺れるのってそういえばミュウツーの逆襲におけるミュウツーもそうだったよねというお話。人によって作り出された我は一体何者なのかと。ミュウツーは自己のルーツに悩みを抱えたままコピーポケモンたちを連れて去っていった。

あれから20年超。今作では同じアイデンティティの問題に悩むココがポケモンであり人間だという解に着地した。この昇華がなんかいいなって。型にはめずに多様性を尊重する現代だからこその解なのかな。

エンドロールのホシガリスとウッウを眺めながら考えていたのがこれ。ミュウツーの逆襲にはアニポケ特番に我ハココニ在リという続編が存在する。ココの名前の由来もこれかもしれないな、と。Evolution公開に合わせてコミカライズ版も出たのでEvolution世代のキッズ各位にも読んでほしい。アイデンティティに対するミュウツーなりの結論を導き出すお話。

近年のアニメ作品だと細田守監督「バケモノの子」のがまさに養親になったバケモノとバケモノに育てられた少年の心の葛藤を描いた作品だった。ディズニー作品でいえば「モンスターズ・インク」。それぞれ違った終わり方だけど、それぞれなりの「親子」の解釈があって、それぞれ素敵だよね。

幻のポケモン「セレビィ」

最後にセレビィのお話。作中では伝説が語られるのみで、エピローグにのみ姿を現す。本編には直接現れないけど、すべての神秘や奇跡はきっとセレビィのおかげ、たぶん観客みんなそう感じたんじゃないかな。これぞ幻のポケモン。人間味のあるザルードとは対照的。ここでは奇跡について考察するんじゃなくてもっとメタ的なお話。

たぶん今のキッズもセレビィは幻のポケモンとして認知してると思う。アニポケでも本編史上はじめてサトピカが登場しない異色回だった新無印32話でお披露目されてるし。ゲームでは前売券で配布されたから、一部の友達がもってて羨ましいポケモンなのかな。ポケモンGOにて映画コラボ「色違いセレビィのスペシャルリサーチ」が期間限定配信されて救済されたけど。

直近10年間の入手方法を見るとポケモンGO「時を超えるポケモンを追え!」(2018)、VC版クリスタル(2018)、VC版金銀購入特典(2017)、ポケモンバンク特典(2013)。時を超えるポケモンを追え!は全プレだし、VC版クリスタルは周回回収できるから意外と手に入るか。

でもやっぱりセレビィ初配布(2000)以来20年ものあいだ入手方法が限られている状況が続いていることは間違いない。ORASやUSUM、カンムリ雪原で伝説ポケモンのバーゲンセールは行われても、セレビィがそこに並ぶことはない。

ちなみに大きなお友達もポケモンコロシアム予約特典ディスク(2003)で友達にも配布できたし周回回収も可能なので一部では昔から流通してたけどそういう人のお話はしていないので。あの時代はプロアクションリプレイ産の方が流通してたし。

閑話休題。作中に出てくるセレビィの伝承「セレビィが姿を消した森の奥に残されたタマゴは未来から持ってきたものらしい。」はポケットモンスター銀の図鑑説明文。今作は20年越しの伏線回収。

これって単に作中で伝承されているだけじゃなくて、現実世界でもそうだよね。昔の幻のポケモンにセレビィってのがいて、調べるとこういう図鑑説明になっているらしいってのは。今のキッズからしたら親の代からの伝承なわけでしょ。そしてググると実際世界中の人々が20年に亘って幻のポケモンとして描いてきた痕跡が残っている。かつて東洋では名を残した英雄を祠で代々祀ってきたのと同じように。25周年のコンテンツってすごい。

でもたぶんとうちゃんザルードのスカーフに描かれた251の文字を見てぱっとセレビィの図鑑番号だってわかるのは金銀リアルタイム世代だけなんじゃないかなとも思う。あの頃は151とか251とかの数字が各場面でよく出てきたからね。

よく考えたらキミにきめた以降のアニポケと連動しなくなった映画作品ってみんなこの構図か。キミにきめたはマーシャドーよりホウオウ、みんなの物語はゼラオラよりルギア、そしてココはザルードよりセレビィの方がより神秘的な存在として描かれていたと思う。ルギアホウオウは当時USUMで入手可能な伝説のポケモンとはいえやっぱり親の代から伝説扱いされてるからかな。こう並べると不遇といわれがちなジョウト組に意外とスポットが当たってる。

ちなみにセレビィが映画に出演するのはセレビィ時を超えた遭遇(2001)、幻影の覇者ゾロアーク(2010)に続き3度目なわけだけど、前者は悪役に利用されてしまい、後者なんて悪役に首絞めされている。か弱い存在として描かれることが多かったはず。大きなお友達は20年経ってようやく本業に専念できているセレビィを後方彼氏面で眺めていることでしょう。

シェイミにもいずれはこの役回りがくるのかな……?できる?

その他雑感

ロケット団の変装って最後までバレなかったね。

殺人が明示的に描かれたのは初?な気がする。シチュエーションとしては「名探偵ピカチュウ」のパパに非常に似ていたけどあっちは死んでないからね、踏み込んだなーと思った。あと怖いのは助手の「どうしてザルードが襲ってくるの」発言。無自覚なのがいちばん怖い。

最後の決戦シーンは史上最強にアツかったですね。森のみんなが仲間になって、それも当初対立構造にあったザルードと森のみんなの和解を経た上で。最後はピカ様のアイアンテールに持っていかれたわけだけど、技を当てるためにテッカニンやザルードたちみんなの援護があって。

ココととうちゃんがザルードと森のみんな、ポケモンとサトシ(人間)の架け橋というのを描くために、敢えて決戦をポケモンバトルではなく悪役の乗ったロボットにしたんだろうか。いままでもロボットに乗ったロケット団を倒すみたいな構図はたくさんあったけど。

最後に。ナットレイがエースバーンのかえんボールでタイプ一致4倍弱点を突かれているシーンは涙なしには見られませんでした。大事なことなのでもう一度。

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